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2010年9月21日 (火)

今日のごみ屋敷

それは先輩方お墨付きの「ごみ屋敷」でしたが、実際には意外なものでした。新米キーパー中年です。

 

作業の始まりにあたって目に付いたのは、コンビニでしばしば目に付く、さいとう・たかをの「鬼平犯科帳」とか「仕掛人梅安」の週刊サイズのマンガ誌。そして池波正太郎『江戸切絵図散歩』(文庫じゃないほう)が雨ざらしになって庭に。ああこれ名著ですよねー。

これだけ重なったのなら、もっとはっきり予想してもよかったと後になって思ったのですが、この時点ではまだ漠然とした予感。なぜなら「ごみ屋敷」とはごみを拾ってきて溜めているものだろうという先入観があったからです。しかしこの家は違ったのでした。

 

60代女性の孤独死現場であるその家は、なんとも異様なことに3つの部屋の天井近くまで物品がぎっしり詰め込まれており、住人はその物品の上、天井までの1メートルかそれ以下の空間で生活をしていたようだとのこと。妖怪じみているとまで言ってはやはり失礼に当たるでしょうか。しかしすでに物件が常識離れして物凄いので、そのへんはわたしはもうよくわかりません(と言わせてください)。

そして、掃除はやはり上から順に物品の山を崩していくので(下から抜いて行くわけがないので)つまり掃除する我々は、故人の歴史を現在から過去へと否応なくたどることになるのでした。が……

 

…一貫している!

それがわたしの感想です。他のスタッフの感じ方は知りませんが。物品(ごみ)の内容が一貫していて、まったく破綻が感じられない。これらの物品はアトランダムに拾い集められたものではなく、故人が自分の意志で買い集めた物の集積だったのです。

具体的に言えばそれは雑誌(オレンジページやレタスクラブ)、マンガ(鬼平や梅安やクッキングパパ、漫画ゴラク)、文庫本(池波正太郎も多数)、洋服(大量)、お酒の空き瓶(大量。ワインが多いが日本酒も焼酎もビールも。凝った銘柄も散見)、あと映画の雑誌パンフ・ビデオDVD(すべて未開封。もっともこの部屋では見ようがないですけれど)……。

海外旅行にもよくいらしたようで記念写真の類も大量に。会社関係の書類なんかもたくさん出てきます。

 

それらの材料からはどうしたって、長く働いてきた女性、いつもおしゃれで映画と美食と書物を愛するセンスのいいご婦人だろうと思われてしまいます。それがなぜこんなことに。

その最後にいたる部分だけがよくわからない、いや、わかるのかもしれませんが、それ以外の部分についてはむしろよくわかる気がします。しかしなぜこうなってしまったか。池波正太郎は20年ぐらい前に亡くなっていますが、池波さんは自分の読者がこうだったと知ったら……。

 

ご存じない向きには通じなくても構いませんけど、池波正太郎という人は「人生の粋」を文章上でさまざまに表し、そしてご本人みずからも体現したような方だったんですね(シネマディクト=映画狂としても有名)。そういう人に惹かれおそらくは長年愛好してきた方の末期がこうだった、というのは、わたしには少なからずショックでもあったんですね。いや、このような状況にある人にすら慰めを与え得たと考えれば、作家もなにも言わないのかもしれませんが。

 

なんとなあ。なんというか。まだまだおもしろいですね人間は。いろんなふうに。興趣尽きぬところがあると申しましょうか。ではまた。

 

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コメント

お仕事ご苦労様です。
数年前に、キーパーズ東京支店様に
エンディングノートを送っていただきました。
時折、取り出しては見ています。
買い物時に(または、いただく等入手する時)、
ちょっと考えてみるんです。
『これは、処分が簡単か?』
(燃えるゴミで出せる、または、貰い手がいるかもしれない)
もしくは、
『お金をかけて処分する粗大ゴミになるか?』
(誰もが要らないと言うかも)
私共、夫婦(アラフォー)の合い言葉は
『棺桶に、持って入れない』なんです(笑)
買い物意欲の急上昇を抑えられますし、
引越や、死後片付けの迷惑に待ったをかけられます。

投稿: 蓮華 | 2010年9月22日 (水) 18時34分

お仕事ご苦労様です。
エンディングノートをいただきました。
買い物時に、処分が簡単かを考慮して購入するか、
『全ては棺桶に持って入れない』を念頭に置いて、物と暮らすと
余分な物が要らない生活が送れるようになりました。
キーパーズさん、エコをありがとうございます。

投稿: 蓮華 | 2010年9月23日 (木) 10時58分

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